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Column 28

プロダクトライン開発について

多様化する消費者ニーズに対応するため、多品種の製品を開発することが必要となりました。
そのため、「類似する製品に搭載されるソフトウェアの開発効率を高めるにはどうすればよいか?」という課題に悩まれている方も多いと思います。
今回はその一助となる「プロダクトライン開発」について、ご説明いたします。

1. プロダクトライン開発とは

プロダクトライン開発とは、「類似する製品群(プロダクトライン)を開発するための共有資産を定義し、その共有資産を有効活用することで個別製品の開発期間短縮と品質確保を実現する開発手法」です。
「従来の開発手法や開発資産の共有化とは何が違うのか?」と疑問を持たれる方がいらっしゃると思いますので、以下の表に比較する項目と相違点をまとめました。

比較項目 プロダクトライン開発 従来の開発
共有化資産 ソフトウェア開発に関連するデジタル化可能なもの全て
  • 要件
  • 開発プロセス
  • 開発ツール
  • フレームワーク
  • モデル
  • ソースコード
  • テスト計画/テストケース等
ソフトウェア開発の成果物の一部
  • 開発ツール
  • フレームワーク
  • ソースコード等
開発対象 類似する複数のプロダクト
(並行開発可)
単一プロダクトのみ
(類似するプロダクトは別途開発)
開発サイクル 短期 プロダクト規模による
運用サイクル 長期 共有化資産の有効期間まで
管理単位 バリアント バージョン
機能要求単位 フィーチャー ユースケース
表1-1 プロダクトライン開発と従来の開発との比較

① プロダクトライン開発と従来の開発の違いについて

プロダクトライン開発では、共有化資産が「デジタル化可能なもの全て」が対象となる点が大きく異なります。
これは、プロダクトライン開発が共有化資産を最大限再利用する前提であるためです。
最初に共有化資産を組織的に再利用するプロセスを定義し、次に共有化資産の定義および作成を行います。
この共有資産は、新規に作成するものだけでなく、過去に作成されたプロセス・ドキュメント・ソースファイル等を含めることが可能です。
最後の個別プロダクト開発では、共有化資産を利用して個別部分のみを新規に作成する流れになります。

再利用プロセス定義と共有資産定義および作成は、類似プロダクト開発全体に関わるため、従来の個別プロダクト開発よりも長期のサイクルで運用されます。
また、様々な共有資産を再利用することで、個別プロダクトの開発期間の短縮やソフトウェア品質を向上することができます。

図1-1 プロダクトライン開発の流れ

これに対し、従来の開発では先に個別プロダクトの開発を行った後、限られた共有資産を流用して開発を行っていたため、開発期間の短縮やソフトウェア品質の向上に対する効果は限定的でした。

図1-2 従来の開発の流れ

② バージョンとバリアントについて

プロダクトライン開発では、「バリアント」という単位で管理を行います。
この「バリアント」は個別プロダクトそのもので、常に最新の状態になっていることが前提です。
そのため、機能追加時や不具合修正後という時系列の概念はありません。
類似プロダクトの開発が必要となった場合に、「バリアント」を派生させます。

図1-3 バリアント管理と類似プロダクトの開発

一方、従来の開発では、個別プロダクトのある一時点を「バージョン」として管理していました。
機能の追加や不具合の改修など変更が発生した場合は「バージョン」を変えることで、同じ個別プロダクトを時系列で管理してきました。
また、類似するプロダクトを開発する場合は、特定の「バージョン」をコピーして開発を行ってきました。
そのため、バージョン管理が複雑になる問題が発生していました。

図1-4 バージョン管理と類似プロダクトの開発

③ フィーチャーについて

プロダクトライン開発のもう1つの特徴として「フィーチャー」があります。
従来の開発で実現すべき機能への要求となっていた「ユースケース」とは以下の点で異なります。

  • 最初から再利用する前提で定義されること
  • 個別プロダクトの特徴となる機能であること

また、プロダクトライン開発では、類似するプロダクトの「フィーチャー」も全て共有資産として管理します。
そのため、個別プロダクトとしては両立しない特徴(例えば加湿器の超音波式やスチーム式等)も「フィーチャー」として管理します。
この「フィーチャー」の集合体が類似するプロダクト開発において大きな効果を発揮します。

以下は各バリアントに含まれる「フィーチャー」を定義した表です。
5つの「フィーチャー」のうち3つの「フィーチャー」が再利用されています。

表1-2 バリアントとフィーチャーの定義

2. まとめ

プロダクトライン開発について、従来の開発との違いという側面からご説明いたしました。
聞きなれない言葉もありましたが、類似するプロダクトを開発する場合に大きな効果があることをご理解いただけたと思います。

なお、実際にプロダクトライン開発を進めるには、いくつか注意すべきポイントがございます。
プロダクトライン開発に携わる社員も在籍しておりますので、興味がございましたら、お気軽にご相談ください。

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